2012年03月23日

第6話「感動よ!人のこころに響くまで」

 琉球國祭り太鼓が結成されてまもなく、名護の桜まつりに出演することになりました。名護市中心街の通りで、70人近くの男だけのメンバーがエイサー大太鼓をうち響かせました。私たちの打つエイサー大太鼓の音は商店街の店舗のガラスを震わせ、観客の「タマシヌギル(度肝)」を抜きました。その観客の中にいたのが、初代名護支部長の“岸本直也”や4代目運営委員長“照屋忠敏”でした。私たちの出演を見た彼らは「ぜひ祭り太鼓名護支部を立ち上げたい」と私に連絡してきました。私はメンバー達に「名護にも支部ができる。彼らに演技を教えにいってもらえないか」とお願いすると、「彼らが習いたい、というのであれば、彼らが習いに来るのが常識だと思いますが」という返事が返ってきました。私は笑って「君がいう通りだ。しかし私が思うに、沖縄一を目指す祭り太鼓であればそれでいいかもしれないが、世界一を目指すなら、こちらから行って指導する心意気がなければダメだと思う。私は祭り太鼓を立ち上げただけ。沖縄一を目指すも、世界一を目指すも君たちメンバーが決めることだ」と言うと、メンバー達は一瞬顔を見合わせると「自分たちが目指すのはやはり世界一の民俗芸能だ!」と言い、名護へ指導に行くことになりました。
 指導をはじめてしばらくすると、岸本直也から「青年会の女子メンバーから、祭り太鼓を習いたい、とお願いされています」と連絡を受けました。私は“ヘの字”の眉にキツい目の青年たちが立ち上げた祭り太鼓に、まさか女性が入会希望するとは夢にも思っていませんでした。初代名護支部長の岸本直也の説得力に負けたのか、それとも入会希望した女の子に心が負けたのか、同時のことは思い出せませんが、私は彼女たちが練習に参加することを認めました。ただし、祭り太鼓の正式会員になれるかどうかは、幹部メンバーが演舞を見て判断する、との条件付きで。
 彼女たちの演舞を祭り太鼓の幹部たちが見にくる日がやってきました。エイサー大太鼓を男勝りに打っている仲井間正美さんを中心とする女子練習生を見た当時の指導副部長の知花朝彦は一言「男たちよりうまい。私は女子をメンバーとして入会させるのに賛成です」琉球國祭り太鼓初の女性メンバーが誕生した瞬間でした。

 現在、祭り太鼓会員の7割を女性会員が占めています。エイサーは男性を中心に大太鼓が演じられ、女性は手踊りでその魅力を表現するのが一般的です。それは素晴らしいことです。また女性が大太鼓を持ち、演技することも時の価値観だと思います。また、現在ではエイサーは大人から子供まで演じられるようになりました。伝統として、お盆の時に演じられるエイサーを大切にしていかなければならないことは当然のことですが、その伝統を継承しながらも「新しい時代の新しい感動」を生み出す事はまた大切な事です。伝統エイサー、創作エイサー、大人、子供・・・・それを抜きにして一番大切なことは“そこに感動があるかないか”であり、それが民俗芸能の真のあり方だと私は思うのです。
posted by ryukyukoku at 22:03| 第1話〜