2019年01月11日

第21話「一音一命」

 琉球國祭り太鼓が、最初に振付をした演技は「滝落とし」である。琉球王国時代のインストゥルメンタルの勇壮な曲に、空手の型と間を取り入れた演技は当時から大好評であった。当時指導部長だったあるメンバーが「滝落としの演舞ができれば祭り太鼓の演舞は全部できる」と言っていたことがあったが、今でもメンバーが最初に習うのは「滝落とし」で多くのメンバーが時間をかけて練習に励んでいる。

 結成から5年後の1987年、海邦国体のフィナーレに出演することになった。フィナーレで祭り太鼓は「滝落とし」を演舞する予定であったが、1週間前の祭り太鼓のリハーサルを見た国体関係者の方から「演舞を変えてほしい」との連絡があった。理由を聞くと、滝落としという曲は“始まり”を感じさせる曲で、フィナーレにはふさわしくない、という。私は断腸の想いで曲の変更を決断した。

 本番を明日に控えた前日、会場での私達だけのリハーサルが行われた。
「明日の本番では滝落としは演舞できないが、リハーサルの今、滝落としを演舞しよう」70名の心が一つになった「滝落とし」の最初の一打は、国体会場から泡瀬の空に大きく鳴り響いた。
一音一命。一つの音にもひとつの命は宿るのかも知れない。
posted by ryukyukoku at 15:06| 第1話〜